季刊誌『光明』

令和元年-秋-第213号



ひとひらのいのち


家族のために死んでみせる




  父親は、浅草にある最尊寺(浄土真宗)の第十六代住職だった。先祖は江戸時代の初めに渡来した中国人の学僧がくそうである。そこで、自らを「在日外国人十七代目」とも称した。放送作家、作詞家、ラジオパーソナリティー、随筆家として、多方面にわたる活躍をした永六輔えいろくすけさんである。


  平成6年に出版した『大往生だいおうじょう』は、200万部を超えるベストセラーになった。おいやまい、そして死を扱っており、かなり重いテーマである。にもかかわらず、誰もが楽しく読み進めたのは、筆者である永六輔さんの絶妙なセンスによるところが大きい。


  「寺育てらそだちだから、物心ついた時から死が日常でした」とさらりと言う。「死は特別ではないと考えた方がいい」が持論じろんであり、「死んだっていうからおかしいんだよ。先に行っただけなんだから」と繰り返した。


  パーキンソン病におかされ、リハビリ中であることを公表したのは、平成22年のことである。前立腺がんもわずらっていた。出演したテレビ番組では、こう語っている。


  「闘病は、闘う病気と書きます。病気と闘って、勝てるもんじゃないです。必ず病気の方が勝ちます」


  だから、無駄な勝負は避け、病気と上手につきあうことにした。おかげで、「パーキンソン病は治らないけど、薬で悪くならない。僕はパーキンソンのキーパーソン」とジョークを口にする余裕が生まれ た。ちなみに、自らの死については、次のように説いている。


  「最後にできるのは、家族のために死んでみせることです」


  自分の死によって、死とはどういうものかを、家族に教えることができる。家族に大切なものを残していけるのだから、先にくことには意味がある。


  「僕にとって理想の死に方は、家族に囲まれて死ぬことです」と言い切り、家族との時間を大切にした。そんな永六輔さんは、平成28年7月7日、七夕の日に、83歳で眠るように世を去った。


  長女で、映画エッセイストのえいさんによると、亡くなった六輔さんのことに話題がおよぶと、家族からは必ず笑いが起こるという。明るい思い出をたくさん残してくれたからに違いない。


  『大往生』には次のようにある。


  「人は死にます。必ず死にます。その時に、生まれてきてよかった、生きてきてよかったと思いながら死ぬことができるでしょうか。そう思って死ぬことを大往生といいます」


  その言葉どおり、永六輔さんの旅立ちは、見事なまでの大往生だった。





第213号目次へ戻る→




『光明』年間購読のおすすめ


『光明』は年4回(正月/春彼岸/お盆/秋彼岸)の発行です。

年間購読の予約をされますと、毎号直接、有限会社豊山よりお送りいたしますので、大変便利です。
檀信徒以外の個人の方もご予約できます。

年間購読料について

1部:900円(税込・送料含)、2部:1,300円(税込・送料含)、3部:1,650円(税込・送料含)、4部:2,000円(税込・送料含)、5部:2,400円(税込・送料含)
※6部以上をお申し込みの場合は、有限会社豊山までご連絡下さい。



有限会社豊山

〒112-0012 東京都文京区大塚5-40-8
TEL/03-3945-3555 FAX/03-3945-0702
(土・日・祭日・その他仏教行事等で、長期お休みを頂く場合も御座います。予めご了承下さいますよう宜しくお願い致します。)