バックナンバー 平成26年11月4日開催 豊山シンポジウム





「『現代の葬儀事情』~直葬・家族葬に直面したとき、どう対応したらよいか~」報告

   直葬や家族葬という言葉を耳にするのは、珍しいことではなくなった。実際に檀務の現場で、このような新しい葬儀の形を経験した方も少なくないだろう。このように変化する葬儀の現状を受け、平成26年11月4日、宗務所において『現代の葬儀事情~直葬・家族葬に直面したとき、どう対応したらよいか~』と題する豊山シンポジウムが開催された。
   冒頭、吉田敬岳センター長の挨拶の中で、昨年まで行っていた教師総合研修会の参加者資格を学生にも広げ、扱う内容を現代の問題に絞ってリニューアルしたものが、豊山シンポジウムであると説明があった。実際に聴講者が約120名という盛会となった。






   現代教化研究所の田中海量所長による提言を主とする30分ほどの講演が行われた。
   田中所長は「平成22年に教化センターが行った“豊山派住職の『20年後の展望』”という調査から、『檀信徒の減少』『僧侶不在の葬儀』『信仰心の希薄化』が読み取ることができ、多くの教師の危機意識の強さが感じられる」と述べられた。
   加えて、変化する葬儀への対応を考えるのに「なぜ社会的事象としてこのようなことが起きているか」という客観的視点の大切さを指摘し、具体的には人口移動という外的要因について言及、都市部や各地方による諸々の違いについても私見を述べられた。
   さらに「社会の中で寺院は求められてきた存在であり、菩提寺と檀家は地域の人間関係のモデルとなりうる。この先もそうであるべきである」と語られ講演を閉じられた。
   後半は田中所長をコーディーネーターとしてのパネルディスカッションである。宗学研究所山口史恭研究員、事相研究所川城孝道主任研究員、現代教化研究所白石凌海研究員がパネラーを務められ、それぞれ10分ほどで順番に私見を述べられた。山口師は、直葬については「金銭的理由または行政からの依頼というような一部を除くと、明確な強い意志をもって選択している」。一方家族葬については「葬祭業者のプランの中からのいわば消極的選択だと言えるのではないか」と述べられた。また直葬や家族葬について諸々のデータがあるが、その信憑性の薄さや恣意性を指摘された。
   特に家族葬を希望する人々は「子供に迷惑をかけたくない」と感じていて、このことが家族葬を選択する理由となっているように見受けられるが、親の葬儀という場面は“最期のしつけ”となりうること、また“(少人数で営むことによって)葬儀を終えた後に子が苦労する可能性があること”を、我々僧侶が喪主側に知らせるという我々の対応が、何かのヒントになってゆくのではないかと述べられた。
   川城師は、事相研究所において、“時間的制約がある時の引導法の授け方について”を議論した結果、「自坊で引導法を修して現場に臨むという方法が考えられる。しかし喪主側に、引導作法の意味を説明し、よく理解していただく努力が必須の条件である」と至ったと述べられた。
   また引導作法に求められる心得として、「宥快の『引導口決秘鈔』に示されたものを上田霊城の『真言密教事相概説』によって」と紹介され、具体的に7項目を示された。
   最後に「菩提寺の住職に拝んでもらってよかった。次の法要もお願いしよう」と思ってもらうような普段の法要や教化活動、コミュニケーションが大切で、加えてそれらのための環境整備も大事となると私見を加えられた。

   白石師は、まず“この時代(今はどういう時代か)”を、「社会構造の変化」「家族制度の変容」「家族の解体」「無縁社会」と分析し、このように分岐し展開するのに従い、葬送儀礼が、「共同体葬儀」「家族葬儀」「直葬儀」「ゼロ葬儀」へと多様化・簡素化してゆくという視点を示された。
   そして我々僧侶の対応として「各寺院・支所や地域・全体(宗派)が対処する組織的基盤であり、利他行としての葬儀が教学的な基盤となる」と語られた。特に教学的基盤として具体的に、三句の法門、三平等、三平等観を挙げられた。加えて、複数の雑誌類から、宗教学者と仏教学者の対談や、精神科医・臨床心理士の言葉を紹介し、その内容について仏教的視点からの危惧を示された。

   休憩を含め2時間30分という長時間であったが、多数の聴講者は、熱心に聞き入っていた。質疑応答も20分以上に渡って活発に行われ、教師にとって関心の高い問題であることがうかがえた。高齢化社会にあって、今しばらく葬儀の数は増加すると予想されている。これはすなわち、葬祭業者のアピールや売り込みとしてのさらなる新しい葬儀の形態が登場する可能性を示しており、また喪主(施主)の様々な要望が挙がるということも考えられる。
   教師は教義と伝統を踏まえつつ、新しい葬儀に対応すべき時代である。現状を概観でき、各師の具体案が示されたこのシンポジウムは、今後を思索するのに有意義なものであった。






去る10月29日(木)に開催された豊山シンポジウムにご参加いただき、誠にありがとうございました。おかげ様をもちまして大盛況のうちに終了致しました。